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こんばんは、船乗り投資家のらっぱです。
私は皆さん知っての通り無謀にも50歳を目前にして高校を卒業してから三十年間勤めていた会社を辞めて船乗りに転職しました。
転職する時は家のローンなどもまだ大量に残っていてお金に余裕が無かったので学校などには行かずに部員として船に乗ることにしたんですね・・・
収入が低くとも部員で仕事を覚えて三年かけて免状を取ってステップアップして・・・ と思っていました。
私は今でこそ機関長ですが、転職する時今まで陸でずっと技術系の仕事をやってきたので違った仕事がしたくて機関部ではなく甲板部を選んだんですよ。
ですが、私が入社した会社に限ってかもしれませんが、船には新人を虐めるカスの多いこと多いこと・・・
一年半ほど甲板部で乗りましたが、この会社で人権を得るには一日も早く上に上がらないといけないと思い、思い切って三十年間技術畑でやってきた経験が活かせる機関部に鞍替えしました。
私としましては、自分の人生をあんなカスどもに左右されてしまったという事はものすごく不本意でしたが、今となっては機関部に移って良かったかなとも思っています。
そこで、鞍替えする時に、一年半乗った甲板部の履歴が全く無駄になった上に、また一から機関部の履歴を付けるとなると気が遠くなるので、会社に言って思い切って休職して尾道海技学院に行かせてもらうことにしました。
私もいやというほど実感しましたが、船の免状というものは履歴というものが非常に足かせになっています。
ただ、最近では7年間乗った経験からすると一人前に仕事ができるまで最低三年ぐらいかかるので二~三年の履歴が必要という事は妥当な線かなとも感じるようになりましたが・・・
今回は、陸の仕事から船に転職しようと考えている人が非常に興味がある第一種6級海技士養成講習とはどんなものか? を解説しようと思います。
尾道海技学院とは
尾道海技学院、別名マリンテクノとは、広島県尾道市にある海技関係に関する講習をやっている学校で、創立は1949年とけっこうな歴史を持っています。
船舶免許・ボート免許の最短コース!尾道海技学院・マリンテクノ (marine-techno.or.jp)
講習では、私が所有している大型の船舶の免状である1級~6級までの海技士免状講習の他に小型船舶免許(1級、2級、特殊)、潜水士講習やマリン整備士講習、水中ドローン講習など海に関する免許や技術の幅広い講習を行っています。
まさしくマリンテクノですね・・・ (;^ω^)
その中で海技士講習を掘り下げると1級~5級までの級、及び第二種6級講習では乗船履歴が必要であって船に乗ったことが無い人にとっては受講できる講習ではありません。
なので私が受講した講習である第一種6級海技士養成講習だけが唯一船に乗ったことが無い全くの素人が受講できる講習になります。
ちなみにこの1級~5級までの講習はいわゆる受験講習なので、いってみれば既に受験できる履歴がある人むけの予備校みたいなものなんですけどね・・・
それでは、次は私が受講した第一種6級海技士養成講習とはどのようなものかを説明しましょう。
第一種6級海技士養成講習ができたいきさつ
最近でこそ海運会社がYouTubeやSNSなどで会社や船をアピールするようになりましたが、それまでは運輸局でしか船員の募集をやっていないことや、新卒者が長続きしないこともあり今でも海運業界は慢性的な人手不足に陥っています。
今では船員になるにはどこに入口があるのかなどネットで検索すれば出てきますが、それまでは入口がどこにあるのかすら分からなかったワケなので、この辺は国を含む業界全体の怠慢もあったのかなぁ・・・ とも思います。
昨今の不景気や、トラックドライバーに見られる「働き方改革」(改悪?)によってトラックでの輸送に不安ができて最近では船員という職業にスポットが当たることが多くなってきました。
現に、私が所属している会社でも将来の不安からトラックドライバーを辞めて船に乗った人も居ます。
海運業界のほうも、ヘタに海技学校卒の新卒を雇うより陸上からの転職組(特に機関部は)をターゲットにしている会社も多くなりました。
たとえばもし、あなたが大卒の30歳だったとすると陸上での勤務年数は7年ほどあります。
いくら若いといっても23歳で社会で働いた経験の無い新卒を雇うのと7年間の社会経験がある30歳の転職者を雇うのなら30歳の経験者を雇ったほうがモノになるだろうという考えです。
新卒を一から教えるよりも、もともと技術を持っている転職者を雇ったほうが即戦力で働いてくれますもんね・・・
私の会社でも機関部に造船所の溶接工からの転職者がいますが、溶接の腕は超一流でとてもじゃないがかないません (;^ω^)
その辺のいきさつもあり、即戦力の人材を早く職員に昇格させる第一種6級海技士養成講習というものができたという事なんですね。
まさに海技関係の学校を出ていない陸からの転職者のための講習です。
第一種6級海技士講習の内容
講習の流れとしては尾道海技学院の案内では座学と社船実習を二ヶ月と書いてありますが、手帳を見かえして私の例でいうと、
- 座学 10/17開校式 ~ 翌年2/1(最後の二週間向島ドックでの講習含む)
- 5級、4級海技士国家試験(筆記) 2/4 ~ 2/7
- 社船実習 2/10 ~ 3/27
- 卒業試験 3/29
となっていますので、これから受講を考えている人はこれぐらいの失業期間が必要だと考えておいてください。
私の場合、年末年始を挟んでるので少し長いかもしれません・・・
ちなみに、私はその時はすでに海運会社に所属していましたので受給していませんが、受講期間中の失業保険を受給しながら受講することも可能らしいです。
座学で学ぶことといえば、このブログの海技士試験問題解説で書いてあるようなことを朝8時30分(だったかな?)から昼休みを挟んで夕方5時までみっちりとやります。
これが夕方になってくるとなかなか尻が痛いんですよ・・・ (+_+)
座学が進んでいくと実技講習が入ります。
そこでは小さいマリンエンジンの分解や溶接など、ほんの触り程度ですが船に乗ってからのための実技を勉強します。
この実技講習は退屈もせずけっこう楽しかったですよ。
その後、座学講習が終わる二週間前から尾道海技学院の近くにある向島ドックにてドック講習なるものがあったのですが、最近ではドック講習が無くなって代わりに乗船実習が二週間伸びたみたいです。
私としては、分解された船のエンジンのピストンやシリンダヘッドを見たのがこれが初めてだったのでけっこう感動しました。
今は、このドック講習が無くなったことで抜出されたピストンを見るのは実際に船に乗ってからのドックまで見ることが無くなったのでその辺はなんだかなぁ・・・ と思うところです。
座学が終了すると、尾道で借りていたウィークリーマンションの部屋を引き払って大阪に帰り、4級と5級の筆記試験を受験しに4日間運輸局に足を運びました。
この尾道の6級講習は6級とはいっても4級まで受験できる内容なので私の同期のほとんどが4級まで受験しました。
皆さんも受講するなら是非とも4級までチャレンジしてください。
筆記試験が終わると間髪入れずに今度は社船実習です。
その前に尾道の講習の途中で就職セミナーというものがあるのですが、就職セミナーとは名ばかりで半分面接というのが実態のようです。
そこで、海運会社と実習を受ける受講生とのマッチングを行いそのまま60日間社船実習→就職という流れになるのですね (^^)
この間、講師役である機関長が私の時のようにクソだったりなど悩みがある場合は学校に相談できるので、この辺は心強いところです。
乗船実習が終わると最後にもう一度学校に足を運んで卒業試験をやって卒業です。
この時の卒業証書が履歴を約一年以上縮める魔法の紙なんですよね・・・
ザっと書きましたが入学から卒業までの流れはこんな感じです。
ここからは履歴を6ヵ月つければ身体検査のみで6級海技士資格が取得できます。
講習を受けてよかったこと・よくなかったこと
〇この講習を受講してよかったこと
- 船乗りというみんな同じ目標を持っている沢山の人と知り合える
- やはり、同じ目標を持った沢山(とは言っても13人でしたが)の人と数ヶ月間の講習を共にするので一人で勉強するよりよっぽど励みになると思います。
- 基礎からちゃんと理論を教えてくれる
- 実際に船に乗れば理論を知らなくても仕事はできますが、ちょっと難しい故障でもあれば理論を知っている人と知らない人では全く違うことになります。 この辺りは学校に行かず船に乗って機関長に教えてもらえば・・・ とも思う人も居るでしょうが、理論を知らない機関長もけっこうな頻度でいますよ (;^ω^)
- ほんの触りといえどもスケールが違うだけで実際に乗船してやることと非常に似ている
- この辺は良かったですね。 消える前のサイトでアップしていたのですが、燃料弁の試験などは実際に学校でやったので不安なくできましたからね・・・
- 家を違う所に数ヶ月住むのでなかなか刺激的
- 家を数ヶ月間離れて違う土地に住むってけっこう刺激があって楽しいですよ。 しかも、尾道という街はとても美しいですしね。 (尾道ラーメンも美味しい)
- 免状を取得するための履歴を短縮できる
- 当然ながらこれはこの講習を受講する趣旨ですね。 履歴を短縮できるということは、早く職員になれるので生涯賃金も変わってくるということに繋がります。
- 就職の斡旋をしてくれる
- 陸からの転職者で最も心配な事はちゃんと海運会社に就職できるのだろうか? だと思います。 この講習を受講すると就職セミナーなる面接で多数の海運会社と接触できることは大きな魅力のひとつです。
〇この講習を受講してよくなかったこと
- お金がかかる・給料が入らない
- やはり、この問題が一番大きいのですが、二年間の履歴といえども休暇を入れると実際には二年半ほどかかる履歴を9ヶ月ほどに短縮できるのでお金がかかっても部員で乗った場合の差額を考えると長い目で見た場合ペイできると思います。
- 人によっては飲み歩き過ぎて試験に落ちてしまう
- これは、同じ目標をもった人と友達になって連日復習もせずに飲み歩いてしまって試験に落ちるというパターンですね・・・ 私の同期にもいましたよ(笑)
- 人によってはホームシックになってしまう
- これも人によりけりですが、私の同期では子供ができたばかりで家を長い間離れるのは辛いという人がいました。 でも、船員になれば長い乗船期間の船なら3ヶ月なんでそんなことも言ってられないんですが・・・
・・・と、まぁいろいろと書きましたが、よかった点、よくなかった点はこんなところですね。
ま・と・め
今回は、私のブログを見にいらしてる方々が気になっているであろう尾道の講習について書きました。
私も船に転職する時は行くかどうか悩みましたが、50歳近くにもなると受講するための(建前の?)試験に通らないという話しを聞きました。
なので、直接なんとかガット船の会社に雇ってもらい、次に移った会社からの推薦という形でなんとか尾道の講習を受けれた感じです。
ここまで書いた上で、これから転職して船に乗ろうと考えている人に言っておきます。
私の経験から自信を持って言えますが、受講できるチャンス(費用・時間)があるなら受講したほうが絶対に良いと断言します!
やはり、現場だけしか知らない人と、たった数ヶ月ですが座学で理論を学んだ人には大きな違いがあると思います。
すでに船に乗っている人でも履歴がまだ半年以内なら行く価値があると思います。
ただ、それ以上ついている人は受講する以前の履歴は無効になるので履歴がもったいないですけどね・・・ (;^ω^)
かなり長文になりましたが、また講習のことで聞きたい事でもあればお気軽にコメント欄等からご連絡ください。
昨日は昼間エアコンをつけるぐらい暑かったのですが、週明けから冬将軍がやってきて一気に寒くなるようです。
皆さん体調などを崩さぬようお気をつけください。
それでは、本日はこのへんで・・・ ではでは👋
コメント
アラフィフからの挑戦、凄いです^_^
尾道海技学院、社会人から船員を目指す方には、良い選択肢だと思いました。
船員さんの世界、パワハラ等がもしあったら、乗船中は逃げ場がないかもなので少しきついかもと思いました。
でも強い人ならば、高給ですし十分チャレンジする価値はあると思いました^_^
瀬戸内太郎さま
コメントありがとうございます。
陸上の仕事をやっていて収入や将来の雇用に不安があるなら免状を取得して船で仕事をするのは高給だということもあっていい選択肢だと思います。
その上で、船に乗ると決心したなら尾道などに行って講習を受講したほうが履歴を短縮できるので、部員で二年(休暇を入れると三年弱)やるよりも最終的には生涯賃金で受講費用を取り返せる上にお釣りもきます。
仰られている通り、乗船中はイヤな上司がいても逃げ場はありません。
ただ、現在は昔ほどのパワハラも減って、会社のほうも人材の流出を警戒していますのでパワハラを受けていると会社に言えば船を複数所有している会社などでは転船などもさせてもらえます。
ですが、最終的にはパワハラをやっているクソ船員をクビにすることができるかどうかがその会社の「質」なんですけどね・・・
尾道で勉強するのはいいことですね^_^
ブログでとてもよくわかりました^_^
パワハラ対策もされているのですね。^_^
今の時代、情報共有もされやすいので働く人には、いい時代かもと思いました
返信ありがとうございます😊
いつも楽しく読ませてもらっています。
読んでてふと疑問に思ったのですが、乗船実習で乗った船が合わない時は実習後の就職は無しにして新しく就職先を探すことって可能なんでしょうか?
コンテナ船合わないから貨物船に乗りたいとか。
それこそ希望の船種で実習受けても、どうしてもこの機関長の元では実習後の半年の履歴期間絶対我慢ができないとかなった時とか、逆に会社の方から実習中の出来が悪いから実習は我慢するけど就職は無しで!とかなったら学校に頼らず自力で次を探すんですかね。
アムリタさま
はじめまして、コメントありがとうございます。
やはり、就職セミナーなる半分面接を通して実習社船に乗船するので、実習船が合わないと感じても機関長をはじめ他の船員からパワハラを受けているとかが無い場合はなかなか難しいのでは・・・ と思います。
基本的に卒業後、実習船以外の会社の船に乗る場合、あらかじめそういった約束で乗った場合以外は学校を通さないとダメなのですが、海運会社のほうも学校もそれは嫌がるので多分尾道の先生方に一度は止められると思います。
なので、就職セミナーでは納得のいく会社を選ぶというのが第一前提になると思います (;^ω^)
ただ、大手マンニング会社のように貨物船、コンテナ船、タンカーなど、バリエーションに富んだ船を沢山持っている場合は船種を移りたいなら同じ会社間の転船は問題ないと思います。(ただ、これも海務担当次第ですが・・・)
あと、実習中の成績が一つでも5あるうちの3以下だと卒業できないのですが、実習で乗ったはいいが機関長に嫌われて3以下を付けられ卒業できなかったという人もたまにですが聞いたことがあります。
実習中はとにかく60日間の我慢だと心に決めて頑張って実習をやり、機関長に嫌われないように注意するしかありませんね・・・
私も、実習中その辺りは本当に苦労しました。